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家電製品ミニレビュー ヤマハ「BODiBEAT」 ~ランニングをサポートするミュージックプレーヤー

 体を動かす仕事も趣味もなく、毎日の通勤も必要ないフリーランスのライターなんぞを何年もやっていると、めでたく日影栽培の運動不足オッサンができあがる。運動しなきゃと思いつつも、Wii Fitどころか寝る前のストレッチすら三日坊主、なのにポテトチップスには手が伸びる。32歳独身男児。これで良いわけがない。少しくらいは運動をしなければ。

http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/column/2009/03/06/3612.html

 もっとも手軽な運動の一つが、ランニングだ。ちゃんと走ればストレス解消にもなるし、基礎体力をつけつつメタボと闘うことができる。しかしランニングと簡単にいっても、知識や経験がないと、効率的なトレーニングとはならない。

 そんなときに役に立つのが、ヤマハの「BODiBEAT」だ。BODiBEATは、心拍計と歩数計でランニングやウォーキングをサポートしてくれる、トレーニング支援機能付きミュージックプレーヤーである。



● スポーツ科学に基づいてトレーニング

 製品レビューに入る前に、まずはBODiBEATによるトレーニングの概念からご説明しよう。といっても、わたしはとくにスポーツ科学には詳しくないので、BODiBEATマニュアルからの受け売りである。

 BODiBEATには、トレーニング支援用に、「フリーワークアウト」「ウォークフィットネス」「ジョグフィットネス」「トレーニング」の4つのモードがあるのだが、そのうち「ウォークフィットネス」「ジョグフィットネス」「トレーニング」の3つのモードでは、「運動強度」を元にしたトレーニングを行なえる。

 「運動強度」とは、つまり運動の激しさのことで、「ペース」「テンポ」「心拍数」「%HRR」のいずれかの数値で計測する。「ペース」と「テンポ」は、歩数計からの絶対的な運動の激しさを計測する。一方の「心拍数」と「%HRR」は、心拍数をベースに、その人にとってどのくらいその運動が激しいかを計測する。つまり、「運動が激しければ激しいほど心拍数が上がるので、ある一定の心拍数が保たれれば、ある一定の運動強度を保てる」というわけだ。

 %HRRは、安静時心拍数を0%とし、最大心拍数を100%とする指標である。BODiBEATのマニュアルによると、ウォーキングの場合で%HRRは55~75%、ジョギングの場合で65~75%のあたりが効果的とされている。効果的な心拍数を保つように運動すれば、持久力強化や体脂肪燃焼により高い効果がある、というわけだ。

 BODiBEATでは、ユーザーの年齢などのバイオデータを登録しておけば、あとは%HRRを指定するだけで、ターゲットとなる心拍数が計算される。たとえば16進数でハタチのわたしの場合、%HRRが80%だとすると、ターゲット心拍数は161.6[BPM]となる。わたしにとって、この心拍数が維持される状態が、%HRRで80%の運動強度、ということだ。



● パソコンにBODiBEATをつないで準備する

 さて、実際にBODiBEATを使ってワークアウト(カッコヨク言ってみた)をするまえに、まず準備をしておこう。

 BODiBEATには専用のWindowsアプリ「BODiBEAT Station」があり、トレーニングプログラムの編集やトレーニング結果の管理、そして楽曲の管理ができる。なんかスポーツ科学っぽい話を書いていて、わたし自身が忘れそうになっていたが、BODiBEATはポータブルミュージックプレーヤーなのだ。



楽曲を取り込んだ画面

ライブラリにある楽曲のテンポ分布を調べられる。ハイテンポ曲が少ない

 BODiBEAT Stationの楽曲管理機能は、一般的なミュージックプレーヤー用のアプリに比べると、良い感じに手が抜かれている。まず、CDから楽曲をリッピングする機能はなく、ほかのアプリでリッピングした曲を登録する。登録可能な形式は、MP3、WMA、AAC、WAVだ。BODiBEAT Stationに曲を取り込むと、各曲のテンポ=BPMが解析される。取り込んだ曲は、メニュー内から「同期」を選ぶと、BODiBEATに転送される。

 BODiBEAT本体のメモリ容量は512MBなので、あまりたくさんの楽曲は詰め込めない。取り込むならば、聴きながら走りやすい曲やさまざまなランニング速度に対応できる幅の広いBPMの曲が良い……のだが、正直なところ、わたしが普段聴くコレクションの中には、どうにもそういった曲が見つからなかった。今回はあきらめて、井上陽水のベスト盤×数枚から重複曲を抜いて登録してみた。いろいろ間違っている気もする。

 余談だが、BODiBEATはただのストレージとして認識されるので、試したところMac OS X上で動くWindows XP(Parallelsを使用)でも利用できてしまった。



トレーニングのプログラム編集画面。これは徐々に運動強度を上げていくプログラム

 BODiBEAT Stationでは、先述したトレーニングモードのプログラム編集や追加もできる。標準でいくつかのプログラムがプリセットもされている。複数の設定が何個も連続するような、けっこう長くて複雑なプログラムも作成可能だ。

 このほかに、設定画面では、正確な測定のために必要なユーザーのバイオデータを編集することができる。これらはBODiBEAT本体側でも編集できるが、パソコン画面の方が見やすいので、ここで確認しておくと良い。今回は生年月日と性別、身長、体重だけを入力し、歩幅や心拍数などは標準値を用いた。後述するが、実は歩数のデフォルト値はわりとすごい数値なので、実際には自分で設定した方が良い。ほかの数値も個人差があるので、必要に応じて修正した方が良いが、最初に走る時はわりとわからない数値ばかりなので、とりあえず標準値で走ってみることにした。


ユーザーの基礎データ。10月の肉の日はわたしの誕生日だ 詳細データ。こちらも自分で設定可能だが、ここにあるのは標準値


● アームバンドで上腕に装!着!


BODiBEAT本体。ケータイより2回りほど小さい(けど厚みは同等かそれ以上)

 ようやくここでBODiBEAT(モデル名「BF-1」)本体の紹介に移ろう。

 本体サイズは75.7×38.0×20.1mmで、重さは65g。厚みが意外とあると感じられる。スペック数値で言うと、内蔵メモリは512MBで、バッテリはリチウムイオン内蔵で最長約9時間の連続再生が可能となっている。

 ディスプレイは1インチ128×64ドットの単色有機ELだ。ケータイで言うピクト行(電池残量とか表示するトコロ)に加え3行の日本語を含む文字が表示できる。視認性は明るい場所でも悪くない。



上下を同時につまむと「決定操作」。上下カーソル操作は片方だけを動かす

 操作系統はちょっと変わっている。ディスプレイの上下に、親指と人差し指でつまむことを想定した形状の2つのスイッチがある。これは上のスイッチは下方向に、下のスイッチは上方向に倒すように押せるようになっていて、それぞれカーソル操作に使われるほか、同時に押せば決定操作になる。かなり独特で慣れが必要だが、これならば走っていても、たとえ手袋をしていても、手探りで操作ができる。こういった思い切りがありながら合理性を感じられる設計は、わたしはとっても大好きだ。

 このほかには、「戻り」の操作を兼用するMENUボタンと電源ボタンがある。コネクタ類としては、イヤホン・センサーの専用端子とパソコン接続・充電兼用のミニUSB端子(カバー付き)がある。



同梱のイヤホン/センサー

 同梱されているイヤホンは、脈拍センサーと一緒になっている。脈拍センサーは、耳たぶに付けるクリップタイプ。すべて頭周辺に取り付けるものなので、一本にまとまっているのはなかなか合理的だ。ただ、標準のイヤホンはクッションでくるむオーソドックスなタイプなのだが、どうにもわたしはこのタイプが外れやすい耳をしているので、今回はついでにお借りしたオプション「JA-BF1」を使い、別のイヤホンを接続することにした。

 さらにBODiBEATには専用のアームバンドが付属する。BODiBEATおよびイヤホンとも防滴仕様で少々の雨や汗にも耐えうるので、操作部などが露出していて使いやすい。また、BODiBEATのデザインにあわせて作ってあるので、ちゃんと腕に巻けば、かなりしっかり固定される。

 アームバンドは左腕の上腕部につける。

 この手の製品を走りながら使うと、ケーブルの取り回しが邪魔になりがちだが、標準のイヤホンはギリギリの長さで作られているし、「JA-BF1」にもケーブルをまとめる小道具がいくつか付属するため、極力邪魔にならないように工夫されている。今回の試用時は、用意したイヤホンのケーブル長が絶妙だったため、ランニング中も適当に流しておくだけでケーブルは気にならなかった。


アームバンドにBODiBEATを装着したところ アームバンドを腕に装着したところ


● 代々木公園を、走った

 今回は代々木公園で公園内のトラックを走りつつ、いくつかのモードを試してみた。

 まずは自宅から公園までの往復で、「フリーワークアウト」のモードを試した。フリーワークアウトは、ペースにあわせた音楽が再生される。ただ、信号などでペースが頻繁に変わるところでは、曲もめまぐるしく変わり、曲を楽しむ、という感じにはなれなかった。

 続いて、「ジョグフィットネス」のモードを試してみた。これは最適な有酸素運動ペースを音楽のテンポで教えてくれるというモードだ。ターゲットとなるテンポと走るテンポがずれると、電子音で補正を促してくる。心拍数が上がりすぎると、自動でターゲットテンポを落としてくれる。

 そして最後に、「トレーニング」モードで、プリセットされている「Tempo」というプログラムを試してみた。これは%HRRが80%の運動強度を8km続ける、というものだ。わたしの場合、162[BPM]というターゲット心拍数を維持しつつ8km走る、ということになる。

 このターゲット心拍数に基づき、BODiBEATはこちらに指示を与えてくれる。運動中、センサーで計測している心拍数がターゲットより小さければ、よりテンポの速い曲が再生され、ランニングペースを速めるように誘導してくる。逆に心拍数がターゲットを超えると、テンポの遅い曲でランニングペースを遅くするように誘導してくれる。

 ペースチェンジ時に、新しいペース向けの曲のテンポにすぐに合わせられない場合は、再生時に「ピッピッ」というテンポ指示用の電子音が重なる。走り手は、その電子音にあわせるように足を蹴り出す。足の蹴り出しテンポ(歩数センサーで計測)と目標ペースが一致したら、電子音はフェードアウトし、曲のみが流れるようになる。走るテンポと目標ペースがずれたら、また「ピッピッ」という電子音が鳴り、ペースをあわせるように促してくる。

 運動強度は%HRRで80%と、それなりに強めだが(マニュアルによると「レース用持久力の強化を目的としたペース走行」だそうだ)、運動不足きわまりないわたしとしては、歩いているのと変わらないスローペースのジョギングでも、80%の運動強度に達していた。このように、心拍数をベースに運動強度を測る場合、運動不足の人にはそれなりに運動強度になるのが面白い。面白いが、それなりに強い運動強度のはずが、ガンガン他人に抜かされていくのは、なんだかこっ恥ずかしい感もある。

 指示通りに走ったところ、約37分で「Tempo」のプログラムは終了した。だいたい代々木公園内の周回コースを4周ちょっとしている。

 各モードともに、終了すると、ログが記録される。BODiBEAT上で簡易表示もできるが、あとでパソコン上のBODiBEATに転送すれば、大きな画面で詳細なデータを確認できる。ちなみにプログラムを最後までやらず、途中で終了することもできるが、その場合もログはしっかりと残る。



● 家に帰ってトレーニング結果を吟味

 トレーニング後、BODiBEATをBODiBEAT Stationが起動しているパソコンに接続すると、走ったログが転送され、「エクササイズライブラリー」のメニューから参照できる。ログは何種類かの表示形式があり、自分で好きな表示形式を追加することもできる。

 グラフ表示する場合は、縦軸の数値を何にするか選ぶことができる。ここでは縦軸に心拍数をとってみた。


プログラム中の心拍数推移グラフ

 指示通り走っただけだったが、しっかりとターゲット心拍数の160[BPS]前後を維持している。科学的に効果的な運動ができたのは、なんだか非常に嬉しい。

 あと、やはり今回は取り込む曲数が少なすぎたようだ。BODiBEATでは、プログラム中にペースがどう変わっていったか、そのときどんな曲だったかなどの履歴も確認できる。


プログラム中の曲履歴

 今回はハイテンポな曲が少なく、148[BPM]の「5月の別れ」(ホントは148[BPM]もなさそうなスローな曲である)と151[BPM]の「神無月にかこまれ」が交互に流れ、スタート時やペースが遅すぎる時には、BODiBEATが標準で搭載している158[BPM]以上の曲が使われた。もうちょっと早いテンポの曲が多数必要だったようだ。ジョギングに適している曲やアーティストを探すのも面白そうだ。

 また、どうにもデフォルト設定の歩幅と実際の歩幅が大幅に違っていたようで、距離はだいぶめちゃくちゃに計測されている。歩幅はデフォルト設定で140cmだったが、歩いているみたいなジョギング速度のわたしの走り方とは、かけ離れている。走行中、ケータイでGPSログを取り、あとで解析したところ、8kmとされたところは、地図上は約4.5kmだった。だいたい1.78倍となっている。つまり、実際の歩幅は79cmくらいだったと推測できる。歩幅がわからないと、距離や速度が誤って算出されてしまうので、ほかの数値はともかく、ここだけは最初にチェックしておくべきだった。



● 安くはないが価格相応の機能性

 ランニングは、実はそれほど簡単なことではない。足にあったシューズを履いてただ走れば良いわけではないのだ。ペースや量をちゃんと科学的に決め、それに従わないと、トレーニング効果は正しく得られない。

 BODiBEATは、トレーニング中の運動強度測定をサポートしてくれるツールだ。BODiBEATだけで正しいトレーニングができるわけではないが、それでも、ほかでは得難い、なかなか素晴らしいトレーニングサポートをしてくれるデバイスである。

 BODiBEATの販売価格は2万9,800円と、決して安くない。ただのミュージックプレーヤーとしては容量も小さく応用も効かせにくい。しかし、実際に使った感想としては、機能を考えれば格安だとも感じる(スポーツ用の心拍数計は意外と高い)。

 ランニング初心者にとっては、ちょっと値段で二の足を踏んでしまうところだが、%HRRに基づいた運動強度測定などは、初心者こそ役に立つ機能でもある(ある程度の知識を学ぶ必要はあるが)。もちろん、ランニング上級者にしても、より効果的なトレーニングをする上では、非常に役に立つデバイスだ。週1くらいのペースでも、効果的なランニングをしたい、と思っているならば、ちょっと購入を検討してはいかがだろうか。




■URL

  ヤマハ

  http://www.yamaha.co.jp/

  製品情報

  http://www.yamaha.co.jp/product/bodibeat/

■ 関連記事

・ ヤマハ、運動ペースに合った楽曲を再生する「BODiBEAT」(AV 2008/01/21)



2009/03/06 00:00

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